ワーホリでカナダへ行き1年間で英語力がかなり上がったのを感じた。しかし残念ながらビザの期限切れのため日本に帰国した。そこそこ英語ができるようになったのだから英語を使う仕事がしたかった。再びカナダに戻るかもしれないからと日本で就職よりもバイトを選んだ。
通訳、翻訳、外資系のオフィスでの華やかな印象がある仕事を探してみるがたった1年間のワーホリ経験で仕事にすぐにつながる英語力が身についてるはずがない。
どこに応募してもバイトは決まらなかった。
理由なしに自分はすごく英語ができる気になっていた。英語学校は半年しか行かずに後は遊んでいたのに「俺イケてるんじゃ?」と勘違いしていた。
あるじゃないですが、学校で悪ぶっているグループにいると、自分も強くなった気がする。
とか
ルフィーが助けてくれるから、威勢だけはいいウソップのような男…
僕です。
結局、高校生のときにバイトしていた喫茶店で雇ってもらった。
スタバのようなカフェじゃなくタバコの煙がもやもやしている古い雰囲気の喫茶店。
コーヒー豆は30種類以上あるこだわりの店。お客の半分は常連さんと近くで働いている会社員。
そしてなぜか怖い人たちの集合場所になっていた。この人たちはおそらく闇金をしていた。
このコワモテ集団は朝にこの喫茶店に集まり、ミーティングをしていた。
なぜこんなオープンなところで!?
借金の取り立てからナワバリ争いまでなにやら物騒な話が聞こえきて自分のような若造をビビらすには十分だった。
ただ僕と店長には優しく接してくれる。映画にでてくるような怖い人の見本のようなリーダー格のおじさんは、毎朝9時に来てアップルジュースを注文するのが日課。
メドューサも道を譲るくらいのオーラがある。ジョジョがスタンドをだしても、冷静でいられるだろうか。
そんな極道おじさんでも50回くらい会えば打ち解けてきて、笑い話しをするくらい普通に接することができるようになった。
これはmere exposure effect*(単純接触効果)が理由だろうか。*何度も繰り返し接すると好意度や印象が高まる
冗談なのか本気なのか「俺の下で働かないか?」と聞かれたときは心拍数が急上昇し、笑った顔がひきつったまましばらく戻らなかった。あのままメンバーになっていたらどうなっていたのだろうか…丁重にお断りをした。自分でも気づかないうちに漏らしていたかもしれない。
そんな喫茶店にたまに外国人が迷い込んでくることがあった。
そんなときは「やった!英語で話せるチャンス」とドキドキしながら
「ワットウッジューライク?」
と最高の気持ち悪い笑顔で話かけると
「コーフィくださあい」
と流暢な日本語で返事をされた。
なんだよーオレは英語が話したいんだ~
ということもしばしば。自分の英語力のギリギリ最大パワーを発揮したいたんだ。
最大パワーといっても、非力すぎてクリボーレベル。
KAT-TUNも言ってた。ギリギリで生きていたいからって。
ある日、日本人女性とアメリカ人らしき男性が入店。英語で話しているところへ笑顔のおかしな店員が登場。(自分のこと)
自分 「what would you like?」(ご注文はなににしましょう?)
男性 「Oh you speak English! I will have アールグレイ」(英語を話すんだね、じゃあ、アールグレイください)
やるな!紅茶の種類まで指定してくるとはさすがだ!
女性のほうはカフェラテをオーダー
無事スマートにオーダーを取れた自分の仕事っぷりに満足しながら、店長にどや顔で
「アールグレイとカフェラテお願いします」と伝える。
「どうだ店長!オレこんなに英語できるんだよ」(時給あげてよと心の中でつぶやきなが)
テーブルへカフェラテとアールグレイを持っていき「ヒアユーアー」と男性の前にアールグレイを置いたら
「アイスティー頼みましたけど…」
え?
あれ?
まさか!
そんな
アールグレイ言ったよね
アイスティーがアールグレイに聞こえる英語力…
動揺を隠しながら、オレ同じ間違いは起こさない主義だからスマートに何もなかったようにアールグレイを下げて、代わりにアイスティー持っていきました。
店長のニヤリとした顔をちらっと見て、僕はその日ずっと下を向いてました。
なぜアイスティーとアールグレイを聞き間違えたのだろうか。当時のリスニング力ではこれが精一杯だったのだと思う。
喫茶店でカレーライスの辛さの具合を聞かれたので
「はい 少し」
と言ったらしばらくしてアイスコーヒーがでてきた。
というネタのような読者からの聞き間違いメールを読んだときにこのアールグレイ事件を思い出した。
「はい少し」が「アイスコーヒー」聞こえるのと同じレベルで「アイスティー」を「アールグレイ」と聞こえるのが当時のリスニング力だった。
こうやって間違いを繰り返して人は成長していくものです。という意識高い系のフリをして締めくくりたいと思います。
いつもギリギリで生きていたいから